以前一度話題に挙げた、『ベルリン・天使の詩』パロディ。
いやもう、もともと映画史に残る名作といわれる作品ですし、
まだ壁のあった時代のベルリンを舞台にした、記録的な価値もあるのですが
人間を何千年も見守り続け、人の世界に干渉したいと思いはじめた
主人公の天使ダミエルとカシエルが非常に74くさく、
私としては非常にツボな作品です。
なにしろ、天使がおっさんですよ! しかもコートにマフラーという
これまたおっさんな格好。おっさん天使だからこそ成立する映画というか。
物語に特に大きな動きはないのですが、その静謐さもおっさんならでは。
そもそも、天使の集会所が図書館ですからね。そこも74的!
若者天使だとあちこち動き回って、こうはなりません。


天使はまあ、どちらも似た者同士ではあるのですが
ブランコ乗りの女性に恋して、人間になってしまうダミエルが
グレートさん、相棒ダミエルに置き去りにされてしまうカシエルがハイン。
ダミエルが人間になった後、壁の東側でその抜け殻(?)を抱える
カシエルの姿が、またいいのです。おっさん同士で姫抱っこですよ!
演じるブルーノ・ガンツとオットー・ザンダー、同い年の親友だそうで
(オットー・ザンダー氏は惜しくも2013年に亡くなっています)、
ハインにしちゃ、ザンダー氏はちょっと老けているのですが
雰囲気はぴったりなのでよしとします。
ブランコ乗り役のフランスの女優さんには、あえて言及しませんが
一応フランちゃんで。実はこの女優さんもすでに故人だそうです。
この作品の直後、壁が倒れたベルリンの激変ぶりもあいまって、
もう30年近く前の作品なのだと、隔世の感ですよ……。
色を感知しない天使の視点で撮られているため、
ほぼ全編、モノクロームなのですが、だからこそ余計にノスタルジック。
絶望した人間たちに寄り添う天使の描写が、非常に美しいです。
あと、なんといってもコロンボことピーター・フォーク!
良い役貰ってますが、ほんとにいい役者さんだとわかります。








で、この作品には『ファラウェイ・ソー・クロース!』という
続編があり、カシエルが人間になった物語が語られるのですが、
正直映画としてはちょっとまとまりが悪く、混乱します。
第一作が大人のおとぎ話に徹したのに対し、こっちはリアリティや
その他いろいろな時事的要素(壁の崩壊や、その後も争いの絶えない
世界への失望など)を盛り込みすぎ、迷走したという印象です。
でも、純朴なカシエルがかわいいので許しちゃう。
ルー・リード御大も出ているしね。ああ、彼も2013年に亡くなったなあ……。
純朴すぎて悪の堕天使(ウィレム・デフォー!)につけこまれ、
あっという間に転落してアル中ホームレスになるあたりは
まさにグレートさん。二作目のカシエルはグレートさん+ハインです。


まあ、それは一旦置いておきまして、私がおすすめしたいのは
第一作のBlu-rayに入っている、未公開映像。
ここで、実は第一作では天使のままだったカシエルまで
ラストで人間になっているというバージョンがあったことがわかります。
で、ブランコ乗りとめでたしめでたしのダミエルのところにあらわれ
なぜかそこに置いてあったパイを投げつける。笑
ヴェンダース監督は、「パイ」だとコメンタリーで言ってますが
生クリームどっさりの、巨大生ケーキです。うおう。
最後は三人で、大団円を祝してパイ投げ大会になってしまいます。
このときのふたり(もちろんダミエルとカシエル)が非常にかわいい!
そして、オットー・ザンダー氏が二作目よりも若いので
人間になった断髪姿が、ますますハインっぽい。
まあ、長髪が好みってのもあるのですが。(しつこい)









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